最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)718号 判決 1958年3月07日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由第一点について
論旨は原判決は、自創法四条三項の解釈適用を誤つており、上告人は同項にいわゆる「当該農地のある市町村の区域内に住所を有するに至る見込のあるもの」に該当する旨主張する。しかし原審は証拠に基き農業委員会の決議当時における上告人の地位、職業、子の教育関係等を考慮すれば上告人が湯沢村に住所を有するに至るであろう時期は上告人主張の七年余の将来より更におくれるかも知れない状況にあつたと認定し、かかる状況において、右委員会が上告人につき自創法四条三項にいう「住所を有するに至る見込がある」とは認められないとしたのは相当であると判断しており、右判断は正当であるから所論は採用し難い。
同第二点について。
論旨は、原判決に農地調整法四条三項(昭和二四年法律二一五号による改正前)又は四条五項(同改正後)の解釈を誤つていると主張する。
原審認定によれば本件買収計画を定めた当時本件農地は訴外高橋恒太郎によつて耕作されていたものであるが、右恒太郎と上告人間の本件土地に関する使用賃借および賃貸借は農地調整法四条一項の承認も許可もないから同条三項又は五項によつて無効であるというのである。そしてたとえ小作契約が無効な場合でも地主が自ら耕作しないで、その意思によつて他人に耕作せしめている以上、自創法による買収については小作地と見るべきものであるから、この点に関する原審の判断に違法はなく所論は採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)